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オレには最近嫌な仕事ができた。そして好きな人ができた。
正確には、それを自覚した。
それは大変なことだった。まわりもだったけど、なによりオレ自身にとって。

まず、両親が変わった。仕事の内容が少し偏った。それにオレは全然気付かないどころか、なんにも考えてなかった。それでもたまに数が少なくなったオレが無意識に嫌だと思っていた内容の仕事がまわってきて、その度になんだかいやだなあという気持ち、にも気付かなかったんだけど。そういうときに、ヒソカの声を聞いたり会いたいなあと強く思うようになっていた。知らないうちに、気付かないうちに。多分、ヒソカに聞いたら教えてくれるだろう。でもそれは恥ずかしいから聞かない。だって、それは。
とにかく、そうやってヒソカを求めるときヒソカはよく頭を撫でてくれた。なんにも言わずに。自然に。ふうっと力が抜ける、と、ある日突然気付いた。それから、あれ、おかしいな、と思った。仕事だから、どんな仕事だって気を抜いているわけじゃない。当たり前に気を張って、仕事が終わって家に帰るとほっとしてシャワーを浴びる。食事をする。寝て、また仕事。それでなんの問題もなかったのに、どうして今日はこんな風になるんだろう、って。
いつもと様子が違うことに気付いたのか、ヒソカの手がとまった。どうしたの、と穏やかな声が続く。
わからない、と呟いた。オレは自分のことをわからないということが多い。ヒソカはあれこれ聞いてくれるけど、いつもわからないばかり。最初はどうしてそんなことを尋ねるのだろうと思って、そのうちわからないばかり連呼してて嫌われないかと思うようになり、今はまあ大丈夫だろうと思っている。面と向かって聞きはするものの、ヒソカはその優柔な耳と目とそのほか諸々でオレの知らないオレを見つけてくれるからだ。それが楽しいとも言っていて、心底安心したのは秘密にしておきたいけど、バレてるだろう。
だから今回もバレてると思う。知らないのはオレだけだ。オレのことなのに。元々安定していなかった気持ちは、それでさらにぐらぐらと揺れて、悲しいやら腹立たしいやらごちゃごちゃになった。だから、知ってるんでしょ、と言った。
滅多にしないきつい言い方にもヒソカは何を、と返してくれる。その穏やかさが、余計腹立たしい。何でも、と返すとヒソカは困ったように眉を寄せた。全部はわからないよ、イルミ。声は変わらず穏やかだ。比例するようにオレはごちゃごちゃになっていく。それがいやで、ヒソカの腕の中から逃げ出した。イルミ、と珍しく驚いたヒソカの声が聞こえたけど無視して部屋を出た。

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