イチゴタルト05

「つーかさ、今あの家どうなってんの?」
「オレとキルが家を出てて、ミルとアルは相変わらず。家はカルが継ぐことになった」
「へえー。昔からカルはしっかりしてたもんな」
そういうキルアはゴンが見たことのない兄の顔で、ようやくゴンはキルアが以前ほどあの家を嫌悪していないことにはっきりと気付いた。イルミが昔と違うからかもしれない。二人で話している様子は、仲のいい兄弟そのものだ。
「だけど、母さんは未だにキルがいたら、っていってる」
「最低」
心底嫌そうな顔に、イルミも同感らしい。ほんの少し眉が寄った。
「カルはキルに会いたいみたい」
「どうして」
「懐いてたからじゃない?」
「イル兄にもね」
「だから、オレも顔を見に戻るつもり。父さんから、ヒソカを連れてこいって言われてるし。母さんにも納得してもらわなきゃだから」
「…イル兄もおふくろ刺したわけ?」
おもしろがって聞くキルアに、イルミは首を振った。
「仕事のあとヒソカの家に行ってそのまま帰ってないだけ」
「………親父には」
「仕事で会ったときに言った」
ついにキルアは額に手をあてた。イルミはそれを不思議そうに見ている。ヒソカは珍しくそれとわかる苦笑を浮かべていた。
「で、親父は全部納得してるんだ」
「うん。オレのことも、キルのことも。しかたないって、みんなオレの子のはずだが、例外もあるだろうって言ってた」
「カルは違うだろ」
「うん、だからオレたちのことはいいと思ったんじゃないかな。母さんはいまいちわかってないみたいだけど」
「なるほどね」
キルアはううんと腕を組んで考えるポーズをとったが、ゴンにはなんとなくキルアがどう応えるかわかっていた。だから、ゴンと名前を呼ばれたときにも驚かなかった。
「悪いんだけどさ、オレ…」
「いいよ。オレも一緒に行くし」
「サンキュ」
「それじゃ、決まりだね」
飛行船の手配が終わったらまた連絡するよ、といつの間にか空になっていたコーヒーカップをソーサーに置いてヒソカが言う。キルアは最後のイチゴタルトを口に含んでいたので、代わりにゴンがわかったと応えた。
「ところで、ゴンはスーツを持ってるの?」
「どうして?」
「だって、そういうときは正装しなきゃいけないって、クロロが」
そういうとき、がどういう時なのかゴンにはわからなかったが、ヒソカとキルアにはしっかりわかったようだ。ヒソカは楽しそうに、そうだねえと笑っている。キルアはもういやだと言わんばかりの顔をして、ゴンに気にするなと言った。すかさずヒソカが、いいやダメだよ、ねえイルミ、と言う。キルアはヒソカを睨んだ。イルミは、そんなやりとりの横でゴンに改めてスーツの有無を聞いている。ゴンがわからないままに、持っていないと応えると、じゃあ買いに行こうかと言われてしまった。だから何故、と聞くに聞けないでいるとキルアが顔見せなんだからいらないという。それでゴンにもようやくなんとなくだが察することができた。途端、顔が赤くなる。それをヒソカに笑われた。
そんな戯れ合いを小一時間ほどして四人は二組に別れた。

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