SSlog05

「ね?ほら、気持ち良いでしょう?」

グリーンの瞳が一層嬉しげな色になる。
だから、僕は何処が!と叫べなかった。
何処が何処が何処が!他人の体温の、何処が気持ちいいんだバカ!
ちっとも気持ちよくなんて無い。眼鏡が幸せそうに笑うのが信じられない。
他人の、眼鏡の体温はどうにも落ち着かなかった。
温かいなんてぬるいものじゃなくて、熱くて僅かにじっとりとしているようで全く気持ちよくなんてなかった。
心臓は変に鳴って汗もかく。こんなものの、何処が。
それでも、ハネ髪があんまりにも幸せそうに笑うので何も言えなかった。
僕は優しいんだ。酷くね。
口の中で悪態を吐いて、奴の腕の中で大人しくしていた。顔まで責任はとれないから、きっと彼とは対照的に眉を寄せているだろう。
だけどしょうがない。だって、気持ちよくなんかないんだから。

「ドラコ?」
「なんだ」

そんなふうに不安げに僕の名前を呼ぶな。
僕がニコニコしているかいないかがそんなに重要な問題か。
僕は笑いたいときに笑うし、笑いたいときには笑わないんだ。

「イヤ、だった…?」

さっきまでの春ボケ面は何処へ行った。どうしてそんなに心配そうな顔になる。
さっきまで、さっきまであんなに幸せそうに笑っていたのに。

「別に」
「ほんとう?」
「フン」

鼻を鳴らして、本当はそんなことをしたくなかったけれどぎゅっと抱きついた。
やってみると、思ったよりイヤではない。むしろ、嫌悪感が薄まった気さえする。
うん?と首を捻っていると、少し、ほんの少し上から、よかった、と声がふってきた。
それがあんまりにも心底、といった様子だったので思わずため息をつく。
何がそんなに。
ふっとそのため息の拍子に力が抜けた。と同時にあんなにもイヤだった体温が気にならなくなる。
む?と思って彼の背にまわした腕を動かしてみれば、改めて触れる彼の体温は心地よく。
どうしてか離れがたくなってしまった。自分と彼の体温が混ざり合って一つになったような気さえしてして。
ああ、確かに温かい。

「温かいな、ハリー」

笑みがこぼれた。


*****
ハリーさんが抱きつくことを正当化しようとしましたところ、スキンシップになれていないドラコさんは嫌悪感を覚えてしまいましたが、最終的にはうまく丸め込まれました、という話。ああ、こう書くとロマンティックもなにもないな。